懲りずに

この半年間ずっと好きだった彼への気持ちが冷め切ってしまった。好きな人と彼女のインスタなんて知るもんじゃない。普通の男の人を好きになったって自分が泣く羽目になるのは十二分に分かっているのにそれでも懲りずに別の男の人を好きになってしまっている私は誰かに恋をしていないと生きていけない人種なのだろうか。

 

 

 

 

好きな人が出来る度いつも最後の恋であって欲しいと思っているのに人生はそう上手くいかず、死ぬほど好きな人になら捧げてもいいと思っている処女は未だに健在であるし1本しかない合鍵は相変わらず私の部屋のクローゼットに置かれたまま。30本以上の酒瓶に囲まれながら(ガチです)ひたすらだらだら飲みたい酒を飲み1人寂しく夜を越している。

 

 

 

今回好きになったのは学校の先生で歳は私の7つ上。直接授業を受け持っている訳ではないのだがたまたま学校のライブに出演するのを先生が知っていてくれてて前々から会う度に「見るな~」と声をかけてくれていた。しかしその頃は前好きだった彼へのどろどろとした執着が私の生きることへの原動力だったためそういう対象としては見ていなかったし、話も面白いし素敵な人だとは思っていたけどもむやみやたらにノンセクでは無い人を好きになっても自分が辛いだけだと、あと1本踏み込んだら落ちてしまいそうなラインに立ちつつも脳内の冷静な自分にストップをかけられて極力先生のことは気にしないようにしていた。

 

それでもなんだかんだすぐ先生にも恋に落ちてしまった。相変わらず私は優しくされたら直ぐに惚れてしまうおめでたいチョロい人間だなあとは思いつつも前好きだった彼に釣り合うようになりたいと努力したおかげで昔より自分に自信を持って先生にアタックすることは出来ているような気がしている。

私より背が低いけど昔剣道をやっていたおかげか姿勢がいいなといつも見ていて思うし、仕事中にだけめがねをかけているギャップだとか私を見かけたら手をふりふりしてくれるとこなんかがかわいいし、大概見かけるときは誰かと話をしていたりしていて歳が近いこともあるけど生徒に慕われているんだなあとほっこりしてしまう。

 

 

 

 

 

「歌めっちゃ上手いからアーティストでもいけるのになあ。自分で曲作ったりしてないん?」

なんてライブを見た後に先生は言ってくれた。

でもね先生、私普通の女の子じゃないんだよ。

私もずっとシンガーソングライターになりたかったけどノンセクシャルだって自認してからそれまでずっと頭の中で鳴っていた音楽が止んじゃって、それでも音楽に関わる仕事に就きたいから今こうして専門に通ってるんだよ。

 

 

先生には絶対に言わない。私がノンセクシャルな事も、シンガーソングライターになりたかった事も。いつもこんなことを考えつつも好きな人に気持ちが落ち着いた後にカミングアウトしてしまっていることも。

 

 

 

ねえ、あなたの目には私は普通の女の子に見えてますか?背が高くて美人でスタイル良くて料理も家事全般も完璧で歌も上手くて好きなことに一直線でたまにド天然になる、なによりあなたの事を誰よりも好きな、他の子よりも特別な女の子だって思ってくれてたらそれだけで私は幸せです。

 

 

 

 

 

明日も先生に会えますように。私に向かって私の好きな笑顔を見せてくれますように。そう思いながら今日も眠りにつく。