聞けなくなったラジオ

 

好きな人のラジオを聞かなくなって1ヶ月と少しが経った。

 

 

 

番組が決まったと知った時は嬉しくってたまらなかった。好きな人の色んな話が聞けることに対しての期待感もあったがたまたま発表された日が私の誕生日と言うこともあり浮かれに浮かれまくったし番組の収録の観覧も出来ると聞いて番組の初回の放送日、その日に備えて新しいブラウスを買って、精一杯着飾って東京まで新幹線で行ったのは記憶に新しい。

彼の発言にスタッフの皆さんや他の観覧に来ている人も一緒に笑っていてすごく幸せな空間だったし、小雨がちらつく外を気にかけ「雨降ってる?」と台本の裏に書きこちらに問いかけてくれる優しさに改めて「好きだな」と思ってしまった。

毎週欠かさず聞き、つまらないことでも沢山メールを送っていた。夢の中で彼に言われたあの一言(世界一馬鹿な夢女子のやつのその2参照)も忘れられそうだった。しかし、そのルーティーンも崩れ去るのは早かった。

 

 

 

 

毎週メールのテーマが設定されていたがとある週に「恋人としたいこと」というテーマがあった。読まれるメッセージを詳しくは覚えていないがどんな風に手を繋いだりだとかキスをしたいかだとかというメールが多く、それに対して彼が「いいねぇ~」だとか「俺はね~」と楽しそうに話しているのに賛同できない自分に対してだんだん嫌気がさしてしまって、でもラジオを止めることも出来ずもやもやしながらその日はラジオを聞いていた。

でもまだ、決定打になるほど辛くはなかった。

 

 

 

上記の回の次の週の回。

ラジオには恋愛相談のコーナーがあり、毎週1人限定で直に電話で会話ができていた。その中で「付き合っている彼氏との仲が発展しない」という相談があった。

確か付き合ってかなり経つのに手を繋いだりそれ以上のことを彼氏がしてくれないのに対してどうしたら良いのか、という内容だった。

それに対してのアドバイスはあまり覚えていない。確か1回腹を割って話しなさい、とかそういうことを言ってたと思うが、その前に何気なく放ったであろう一言の後、彼の声も、相談している人の声もきこえなくなってしまった。

 

 

 

「好きな人とは、普通触れ合いたいものじゃんか」

 

 

 

心にグサッと刺さった。いや、ガツーンと頭を殴ってきたのかもしれない。たった4、5秒の一言だったけれどそれほどの衝撃だった。

そこからはさっきも書いたようにあまり記憶に残っていない。気がついたら両目からぼろぼろと涙がこぼれ出していた。

 

 

面と向かって「お前は、普通じゃないんだ」と言われてしまった気がした。それまでも番組を聞いていると確かに他の人との違和を感じた。それにうんうんと相槌をうっている彼もどうしても理解できなかった。私だって異性に恐怖感を抱かずに接せるようになりたかった。たとえ叶わないとしても彼に相談出来るような普通の恋を私もしてみたかった。劣等感に浸っていたとしてもでもまだ「私の存在を否定されている」とまでは思わなかった。だから聞けていたのだ。

しかし「普通」という単語に弱い私のハートは一瞬で粉々にされてしまった。

 

思い返してみれば「普通になること」が昔から私の憧れだった。身長、顔。この2つが「普通」だったらどれだけましだっただろう。

背が高すぎるせいでいつも恋愛の対象から外されていた。「スタイルは良くても顔は残念」「あんなに高いのはもう女じゃない」なんて色んな人に影で言われるのには慣れていた。でもそういう陰口を叩いている女子は大体身長も顔も平均的で、なおかつ私の好きな人と付き合ったり私に見せつけるように仲良くしていた。彼氏が出来ても自信が持てることはなく、大学に入り化粧を始めるまでまともに鏡を見れなかった。

 

彼のおかげでようやく変わろうと思えた。人並みになれたらと思い始めたメイクもおしゃれも、結局は私の上辺を取り繕うものでしかない。彼の何気ない一言でボロ泣きしてしまうほど私の内面は弱いのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『目が覚めたら普通になってますように』今日も私は祈りながら眠る。