世界一馬鹿な夢女子の私の話 そのに

 

 

「好きです。結婚を前提にお付き合いしてくれませんか」

 

 

 

 

 

 

そう好きな人から告げられた時の最適解はなんだろうか。私は今も考えている。

 

 

 

 

夢の中、好きな人と二人きり。普通の乙女ならこのまま夢よ覚めないでなんて思う所だろうが私は早く目が覚めて欲しくて仕方がなかった。なぜなら一番最初に思ってしまったことが

 

 

ノンセクシャルって伝えないと」

 

 

だからだ。

 

 

全く嬉しくない訳ではなかった。大好きな人から私にしか見せないような少し潤んだ瞳で、恥じらいを含んだ微笑みが向けられるだなんて実際夢にしても出来すぎだ。

 

 

「私も好きです。よろしくお願いします」

 

 

泣きだしそうになるのを抑えながら自分なりの120%の笑顔で彼の目を見ることが出来ないままそう伝えた。しかし彼の返事を聞く前に意識は遠のき、意識が覚醒した瞬間見慣れてきたぼやけた天井が視界に入ってきた。

 

 

「嘘でしょ」そう呟いても記憶は消えてくれない。いつもの夢なんて覚えていたいと思っても忘れてしまうぐらいなのに。

 

 

 

私はノンセクシャルなんだ。夢の中でさえも。夢でも好きな人とのハッピーエンドを描けないなんて。逃げられないのか。幸せになれない。幸せになりたいのに。逃げたい。逃げたい。どうして。逃げさせてよ。

 

 

異性とはハグもキスもしたいと思えない。セックスも、子供も欲しいと思えない。こんな私は女として、人間として欠陥品でしかない。

どうして好きになったんだろう。どうして好きだなんて感情があるんだろう。辛いだけなのに。泣くことしか出来ないのに。

 

 

彼のおかげで積み上がってきた私の自信や笑顔がその日を境に崩れ落ちてしまった。

彼を好きだと思うごとに「どうして私はノンセクシャルなのか」と涙が流れてきた。どうして生まれてきてしまったんだろう。世間一般のハッピーエンドであるキスもセックスだって私はどれだけ好きでもしたいと思えない。愛情表現だと思えない。「好きだ」という感情を持つ事と伝える事しか出来ない。他の人のようにただ純粋に好きでいたかった。他の人を羨ましがって卑屈になって、ねじ曲がったひねくれた私の「好き」にどれほどの価値があるだろう。あなたに何も出来ない。はたから見たらどれだけ滑稽だろう。様々な考えが頭の中に密集して体にまとわりついてきた。

 

 

 

いつでも頭の中を覗くと高校の頃の私が泣いている。「いっそ知らない方が幸せだったのに」と私を責め立てる声が聞こえる。今よりも不細工な顔でずっと1人で泣きわめいている。

結婚なんて、気がついたらしているものだと思っていた。

子供だって、子供が好きだから子供が欲しいのだと思っていた。

大人になったら好きな人とキスやセックスをしたくなるものだと思っていた。そういうものだと思っていたのに。

好きな人から自分の「好き」を否定されることが身を引き裂かれるほど辛いだなんて知りたくなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうかこんな馬鹿な私でも、もう少し好きでいさせてください。