タラレバ

 

好きな子にお付き合いを断られて4日が経った。未だにLINEの既読はつけれてない。その子の名前が通知欄に流れてきた瞬間タップしたけどLINEを開くのが怖くて1度アプリを消し、もう一度開いてその子とのトークを長押ししたけど私の見たい返事が書いてなかったからだ。

 

 

「やっぱり友達としてしか見れない」

「気になってる男の子がいる」

 

 

その2つがずっと、網膜に焼き付いている。

 

 

 

 

 

告白した2日前、その子の家の最寄り駅で待ち合わせをする予定だった。しかし待ち合わせの時間になっても彼女は来ず、1時間LINEの返事を待ちながら無人駅で待っていた。待ち時間「どこかで倒れてる?」「家に強盗が入った?」と気が気でなかったが息を切らした彼女が「待たせてごめん!」と駅まで走ってくるのを期待していたからだ。

結局寒すぎるので1時間でそこを引きあげ万一の場合に備えてその子の家まで行き、ピンポンを押しても反応が無く、室内から物音がすることもないことを確認し最寄りのファミレスに行くことにした。

ファミレスに入って30分後に御手洗に行ってる時に「日にち勘違いしてた!ごめん!」とバイト先からLINEが飛んできた時は彼女の無事が何より嬉しくてその場に座り込んで涙ぐんでしまった。その瞬間、「やっぱりあの子が好きなんだな」と思ってしまった。

なんとかバイト後の彼女と無事に落ち合え、その日は半年ぶりの再開と言うこともありずーっと彼女と色々な話をしていた。老人施設に研修に行った話や私が保育園に実習に行った話。お互いの推しの話や高校の頃の先生の話、大学の話と1時過ぎぐらいまで布団の中に入っても話し続けていた。布団を顔に被せながら「ふふっ」と笑う彼女が可愛すぎて幸せを噛み締めながらその夜は眠りに落ちた。

書くのが遅くなったが彼女が普段家で使ってる風呂用のマジックリンやニベアのボディークリームの匂いが同じ匂いなのにも私は1人で勝手にときめいていた。

 

次の日兄の知り合いがやっているイタリアンに行きカラオケに行く予定だった。移動のバス中彼女が「ずっとこんな日が続いたらいいのにね」とぽつりとつぶやいて、もしかしたら私と同じ気持ちなのかなあなんて思いながら西日に照らされる彼女の顔を見ていた。

その後は一緒に晩御飯も食べ、新幹線に乗る私と家に帰る彼女は電車の行き先が反対のため駅でゆっくりと別れを告げることが出来ずに帰ってしまった。

 

次の日「寂しいから」と理由をつけて通話をしようと提案したところ既読と同時に彼女から通話がかかってきていたり通話を始めるとお互いの晩御飯の内容だったり前の日と変わらず他愛のない話をしながら告白のタイミングをずっと見計らっていた。

「明日提出の課題があるからそろそろ切っても大丈夫…?」と言われ焦りすぎてしまった私は急に「今彼氏とかいる?」「高校の頃から好きだった」とまくし立ててしまった。

その後彼女の「考えてさせて欲しい」という言葉をポジティブに捉えて待つぐらいには私の心は浮ついてしまっていた。

 

 

 

しかしいざ返ってきた言葉は予想していた10倍も100倍もダメージが大きいもので、「私が思ってたよりもあの子のこと好きだったんだなあ」なんてセンチメンタルな感傷に浸る余裕も無く、これからの人生にあの子がいなくなってしまうことの恐怖感に支配されてしまった。

私は前から帰省する度彼女にちょっとしたプレゼントを渡していてそれはポーチであったりアクセサリーであったり、彼女の家を訪れる度に使ってくれているのが伺えて彼女の暮らしに私の欠片がいるのが嬉しくて、それが好意があると勘違いしてしまった原因でもあった。私が高校生の時に彼女にあげた革でできているクラゲのキーホルダーを自転車の鍵に付けてくれていたり、もし私と友達に戻ったとしたら彼女はどんな気持ちで使い続けるのだろうか。もし私が彼女から離れていけば彼女はもうそれらを使うことはないのだろうか。

 

「もし彼女と同じ大学に行っていたら」

「もし彼女と高校時代もっと一緒に居れば」

「もし進学後もずっと連絡を取っていたら」

「もし彼女に振り向いてもらえるぐらいの人になれていれば」

 

タラレバと考え出したら止まらなかった。

 

 

 

彼女からの返事には「友達の延長で付き合うことも考えた」と書いてあった。

私が彼女に告白したのは手を繋ぎたいとかキスしたいとかではなく、お互いの特別になりたかったからだった。辛い時でも「彼女がいるから頑張れる」そう思ってもらえる存在になりたかった。

私がノンセクシャルであると、どういう気持ちで付き合いたいと言ったのかを伝えるのは未練がましいと思われるかもしれない。嘘かもしれないと、もしかしたらそんな形でしか人を好きになれないのは普通じゃないとまた言われるかもしれない。

 

 

 

 

もう少し、あと少し落ち着いたら彼女にちゃんと返事をしたい。